大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)32号 判決

一 原告らの主張する請求原因一、二、三項の事実は当事者に争いがない。

二 そこで、審決取消事由の有無について判断する。

請求原因四項の(一)、(二)の本件訂正発明および引用例丙の技術内容については当事者間に争いがないところ、原告らは、本件訂正発明において針捌き片C、Cについて引用例丙のものとは装置の具体的構成が本質的に相違し、針捌きも異る旨主張するので、以下、成立に争いのない甲第四号証および同第六号証により、これを検討する。

(一)、装置の具体的構成について

針捌き片は作動版に設けた部材によつて操作(手動による。)される出没開閉機構の操作によつて出没し、かつ、その突出または没入の状態を継続するのに対し、引用例丙では、針捌き片はキヤリツジに設けた操作部材によつて操作される出没開閉機構の操作によつて出没し、常時はバネによつて没入状態にあつて、操作部材を操作(実施例では自動制御機構による。)した時のみ突出し、その没入状態では休針通路の針は編成を行わず休止状態を継続するように休止通路の左右出入口は開放無障碍の状態となり、針捌き片を突出させると休針通路の出入口が閉鎖され、休針通路にある針は編成通路にすくい導かれる針捌き装置を備えるものであつて、両者とも編機において不作動位置にある編針を必要に応じて作動位置に誘導するための針捌き片を設けた装置の構成としては同じ技術思想に基くものであつて、本質的に差異はないものと認められる。けだし、編機に針捌き片を設ける目的は不作動位置にある編針を作動位置に移動させるためであつて、針捌き片の突出、没入および維持をどのように行うか、また、針捌き片の突出位置への移動が手動か自動かは編機の使用目的に応じてなさるべき設計の選択にすぎないと考えられるからである。

(二)、針捌きについて

引用例丙の針捌き片(パレツト42、43)は、その明細書の説明に「パレツトが一連の針を引きこもうとするとき、そのパレツトを引きよせる程上記のバネは強くない。したがつて引きこみを行うためには、前にきた一連のくりかたにパレツトをはめ込むよう、そのパレツトを前進させればよい。然るとき、針の摩擦抵抗がパレツトをその前進位置に保ち、そのバネはパレツトが作業外に出されるすべての針を通り越した後でなければ、そのパレツトを直線に戻さない。テコ52、53はベースプレート9aの端でピボツトに取付けられ、ロツクの後方に突き出たその端部が障害物と出合うときパレツトを前進させるよう、レバー50、51と作用する。」「このように勾配(ラープ94)が動作するとき、それは取入れパレツト42、43を操作するツメ52、53(挺)の軌道上にくる。」とあることにより針捌き片42は、常時はバネ50a51aによつて没入状態にあり、操作部材を操作するときはラープ94によりテコ52、レバー50を介して突出位置(休止位置にある針をすくいこもうとする位置)に回動させられ、ラープ94とテコ52の係合が外れてもパレツト42(針捌き片)が針の摩擦抵抗により突出位置(前進位置)に保たれて連続している休針位置の針(作業外に出されている針)をすべて針の作動位置にすくい込むまで針捌き片(パレツト42)はすくい込みの状態を継続し、それを過ぎると針捌き片はすくい込み状態よりバネの作用により不作動の状態に戻り、左右別々に針捌き片が突出位置に出るようになつていると認められる。

これに対し本件訂正発明では、針捌き片C、Cを手動操作により前部通路に突出させて前部出入口を閉鎖した後、作動版を一方向に摺動させることによつて、前部通路の全編針を後退させ、後部通路の編針とともに一列にメリヤス編みを行うようにしたものであつて、針捌き片の突出位置への移動が手動か自動か、およびその位置の維持の機構が安定状態にあるか不安定状態にあるかの点において相違する。

しかしながら、編機の針捌き片の作用としては、引用例丙の針捌き片が特有の針捌きを行うものとは認められない。すなわち、本件訂正発明のものも引用例丙のものも、作動版を一方向に摺動させることによつてその前部通路にある編針を後退させ、後部通路の編針とともに一列にメリヤス編みを行うものであつて、作動版の摺動方向にある針捌き片のみが編針のすくい込み作用を行うのであるから、すくい込もうとする作動版の一回の摺動に際して、その前部通路の進行方向にある入口の針捌き片のみが突出状態に保たれるだけで充分であることが明らかである。

(三)、以上の次第で、原告らの上記主張は採用できない。そうすると、本件訂正発明をもつて各引用例記載の装置から容易に想到できる発明であるとして、本件訂正を許さなかつた審決には原告ら主張のような違法はないといわなければならない。

三 よつて、原告らの本訴請求は理由がないから棄却する。

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